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vol2.CB-Fのフレームは弱いのか?~1.鉄パイプフレームだからその症状は起こるのか?

column_vol.02 CB-Fのフレームは弱いのか? ~1.鉄パイプフレームだからその症状は起こるのか?


これはCB-Fに限らず、鉄パイプフレーム車でよく話題になることだ。
雑誌の誌面で目にするコメントで、「足回りの強化に伴い、フレーム補強を○○箇所入れた」「ハイグリップタイヤを履かせると、コーナーでは振られまくる!」「フレームが負けるので補強を・・・・・」「フレームの補強は6箇所に過ぎないが、過度なしなりを狙ったもの」など。
また、ユーザーとの対話で、「フレームがよれて、直線では安心してアクセルが開けられない」「パワーアップすると余計振られる」「現行モデルはサスが硬いので、鉄フレームには合わない」など。
そのコメントの意図は、鉄パイプのフレームは弱い・・・と結論づけているようだ。しなりに根拠はあるのだろうか?
私が初めて乗ったオーバー400ccは(もちろん試験場のVFR750だが、公道走行で最初のね)カタナ750だった。
免許取ったらうれしくて、どんなのでも良いから乗りたかった。
その時、知り合いの好意で乗させてもらったカタナ750は、確かに750ccらしい力はあったが、フル加速すると大きな車体のうねりが起こった。アルミフレームのバイクに馴染んでいた私は驚いた!
その時私は、「やはり鉄パイプのフレームは弱い。パワーをかけるとフレームがしなるのだ」と決めていた。フレームがしなるほど、自分はパワーをかけているんだと意気揚々だった。
当時アルミフレーム全盛の頃、雑誌のどこを見ても、「鉄は弱いから強度アップの為にアルミに変わっていく・・・」と。
それ以外のコメントはどこにも無く、それに反対する意見はどこからも出ていない。そのように思うしかなかったのかもしれない。
カスタムを仕事とする十数年で、鉄フレームに原因は無いという答えに達した。
これは実践と理論から得たもので、頭だけでもないし、感覚だけに頼ったものでもない。
鉄パイプフレームは弱い為、直線・コーナーで振れが出ると言うのは「間違いだ」とあえて断言する。
足回り変更の際、肝心なのは、フロントのトレール量と、スイングアームの剛性に集約されるといっても過言ではない。
きちんとした設定であれば、フレーム無改造の車体でも直線で振れることは無い。
コーナーもきっちり決まるし、良く曲がるようになる。鉄パイプだから・・・という理由はこれでほとんど排除できる。
鉄パイプ車の改造で、フレーム剛性と勘違いし易いのに、こんなパターンがある。

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○純正は前19インチ、それを前18インチに変えると、高速道路などの直線でもハンドルが振られる。
コーナーでは車体が左右にうねる。(純正ホイールから17インチへインチダウンの際には更に症状が大きく現れる。)
*原因は、フレーム剛性ではなく、フロントトレール量の減少にある。
対策として、フォークオフセットの変更で、適切なトレール量を与えると、直線・コーナーともにハンドルが安定する。
・同じキャスター、フォークオフセットでタイや外径が小さくなると、トレール量が減少する。
数値は小さいほど不安定になる。

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○緩やかなコーナーで(特に加速時)リア周りが左右に踊っている感じ。
*スイングアームの剛性不足が原因である場合が大半。
スイングアームの剛性アップは、ノーマルの車体にも効果大。
サスの動きがよくわかるようになる。
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○コーナー旋廻時に、後ろ周りがフワッ・フワッ(フニャッ・フニャッ)とする感じ。
また、フル加速時に車体がうねる。
*旋廻Gが強くかかった時に起こりやすい。
サスストロークを使い切るほどにアームが沈み、スプリングの反力が強いところまでストロークしている。そのため、スイングアームを戻すとサスを沈める動きがフワッ・フワッと連続して出る。
旋廻中にフワッ・フワッ(フニャッ・フニャッ)となるので、フレーム・アームの剛性と勘違いする。
原因は、サススプリングレートが低い、またはイニシャルが足りないなどで、
これらはセッティングミスであり、アームの剛性、トレール量に関わらず起こる現象である。
対策は、リアが柔らかすぎるのでレートをあげるか、イニシャルを追加する。
他車アーム流用の際、リンク比が低い(動き易い)場合は設定変更しなければならない。
・スイングアームがストロークするほど、サスユニットとスイングアームへの入力が同じ向きに近づき大きくなる。同時にスプリングのアームを押し戻そうとする反力も強くなる。サスストロークのどの部分を使うか、慎重に選択しなければならない。
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鉄フレームは弱い・・・というのは、バイクに乗り始めた頃から、刷り込まれていた知識ではないだろうか?
私もその一人だった。疑うことなく、鉄フレームは弱いと思っていたが、振れの原因はまた別のところにあったのだ。
フロントを17インチにインチダウンした旧車で相談を受けた。「コーナーでハンドルが振れて仕方がない。ステダンを最強にしても収まらない。ハイグリップ17インチに負けているから、フレームに補強を入れて欲しい。」
見るとすでに補強が入っていた。これ以上どこに補強しろというのか、というほど入っている。
でも、原因はフォークオフセットにある。ノーマルフォークに17インチ。
これは、単純にトレール量の不足で、フォークオフセットを小さくするステムの新造を進め、取り替えたら何も問題なく走るようになった。ステダンも外して、ハンドルは軽くなった。
車体を安定させるには、フォークオフセットによるトレール量の設定は切っても切れない関係にある。
トレールについて詳しくはまたコメントするつもりだが、使用するタイヤ・バイクの使い方でその数値は変わる。
ボルトオンであることや、ハンドルロックが使えて、ハンドルを左右に切ってもタンクに当たらないなど、その他にも条件はたくさんある。それを導き出すのはやはり、プロの仕事だと思う。
鉄フレームだからといって簡単にゆがんだり、よれたりする物ではない。どんなフレームでも安定して走らせるには、足回りとの関連が重要で、そのセットを間違えるとアルミフレームでも簡単にハンドルが振られるということだ。


注)ハンドルが振られる原因の一つに、フレーム強度とは関係なく、ステムベアリングの摩耗による作動不良があります。ハンドルから手を離すと、左右に細かく振られる現象です。この場合、ベアリング交換をしないと危険です。
文中では鉄フレームは強度的に心配ないとも読み取れますが、足回り交換の際、必ずしも補強が必要ではない、という意味です。
製造年数も長く、保管状況次第で、中にはフレーム内部から錆が広がり、いつ折れても不思議はないものもありますので、しっかりとした点検が必要です!


注)・本コーナーに記載されていることは、決して第三者への忠告や誹謗中傷には該当しないことを明記します。
   ・ドキュメント形式の文面では、当事者の了解を得ています。
   ・本文は、基本整備が十分に出来ている車体を対象としたコメントです。

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