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vol5.タイヤは進歩した

column_vol.05 タイヤは進歩した


●タイヤはとっくの昔に変わっている。バイクの走行に重要なのはタイヤであることは誰でも知っていると思う。
「古いバイクだから、ハイグリップタイヤとの相性は良くない。」この事は前回までのコラムで、「タイヤのグリップが原因でフレームが振られること」に直結しないことはわかってもらえただろうか。
ハイグリップでも、たとえ一切の補強をしなくても、真っ直ぐ走るし、コーナーもしっかり曲がる。
その為には、フォークオフセットとトレールの設定が重要。ご理解いただけたと思う。
インチダウンしたから、突き出しを多くし、キャスターを立ててセッティング・・・とか、いかに根拠の無い戯言かがわかる。

では、タイヤと車体の関係はないのか?
フォークオフセットとトレールの設定さえ合わせれば、どんなタイヤでもいいのか?という疑問もわく。
解りやすくまずは、旧車CB-Fの場合では一体どういった関わりがあるか検証する。

まず「ハイグリップ」の定義。言葉そのものは造語のようで、辞書には無い。
言葉の通りに考えると、
ハイ=高い
グリップ=機械を〉つかみ[グリップ、クラッチ]で締める、しっかりかませる;
       …を(特に摩擦で)しっかりとつかむ
の意味から、「ハイグリップ」は路面をつかむ性能の高いタイヤという意味になるでしょう。

各メーカーから、銘柄にはRRなど、いかにもレーシーな名前がつけられている、
スポーツ走行やレース用として作られたハイグリップタイヤの存在はご存じでしょう。
そしてその名前以上のパフォーマンスが与えられている。
では、我がCB-Fにとってタイヤの存在はどのような位置づけになるのか。
自分は全くノーマルサイズだし、ツーリングタイヤなので何の関係も無いと思うかも知れないが、純正サイズのタイヤがすでに「ハイグリップ」だとしたら!?考えを一新しなければならないはず。

CB-Fデビューの頃に装着されていたタイヤの性能は今と比べて低かった。
その頃今の高性能タイヤのことはメーカーですら予想していなかった。
タイヤメーカーは年々技術が進歩してタイヤの性能が飛躍的に上がっている。
旧車向けのタイヤも復刻されているが、トレッドパターン、サイズは同じでも、向上した技術は、一般のストリートタイヤにも十分還元されている。

ともすれば、80年代前半のレーシングタイヤでさえ、今のストリートタイヤに及びも付かないかも知れない。
それほどタイヤは進歩している。今装着しているタイヤは、普通に見えても性能の高いタイヤだということを知って欲しい。

●タイヤとマフラーとの関係は?
タイヤ性能の向上が、どんな影響を与えるかというと、一番に影響するのは動力性能である。
結論から言うと、タイヤ性能が上がっているので、そのグリップに負けない動力性能が必要になった。
昔のタイヤに比べ動力がタイヤグリップに食われているのだ。
バイクをバンクさせ、旋廻Gや、重量でタイヤを地面に押し付けている。
そうすると、それを前に転がすのはエンジンの力であるが、ハイグリップタイヤになるほどその力が必要になる。
コーナリング最中の低い回転であるがゆえに、グリップするタイヤを転がす力が必要なのだ。

今のエンジンには、どの回転域でもアクセルに応じてマシンを押し出す力が要求される。
これはタイヤの性能アップによる影響が大きく、今と比べてバンクの最中はタイヤがグリップしないので、コーナーの最中にアクセルを開ける事が出来なかった時代は、コーナリングを終えてマシンが十分に起きてアクセルを開けなければならなかった。
だから、下の回転の力は要らない。パワーバンドに入ると力を出すマフラー作りやセッティングをしていた。
吹けきって最高出力、どっかんパワーで良かった時代なのだ。

だが今は、当時とは違うマフラー作りや、セッティングを要求される時代だ。
JSBのベース車両のパワー特性を見て欲しい。最高出力が170psを超えているエンジンも多いが、ピークパワーだけを求め、低い回転ではほとんどパワーが無く、突然急激にパワーグラフが立ち上がっているだろうか?
そんなことは無い。ツーリングに使っても、2000rpmからの回転でもストレス無く回転は上昇していく。
パワーバンドはどこにあるのだろうというほど、どの回転域でもスムーズだ。

1980年後半から、2サイクルエンジンに可変バルブの装着で、出来るだけ広い回転域でパワーを出すようになった理由もそこにある。これが、どの回転域でもアクセルに応じてグリップするタイヤを転がす力なのだ。それほどタイヤ性能が向上している事を知って欲しい。
マフラーの出力特性が肝心である。
この件は改めてマフラーのことを書き綴りたいので、ここでは詳しく触れないが、CB-Fも、例え純正サイズでも今では高いグリップ性能のタイヤだということ。
昔のマフラー、昔のセッティングではバイクを前に押し出すことにも苦労する。
昔の考えを払拭しなければならない。今はマフラーも変わる時なのだ。

●「リアブレーキを使わない」ではなく「使えない」
タイヤの性能向上は、ブレーキングにも大きな影響を与えている。ブレーキのかけ方だ。
最近のバイクはメーカー出荷時にリアブレーキのリジットマウントがほとんどで、フレームにロッドの片方を固定するフローティングは見かけない。

ブレーキをかけていない時の状態 ブレーキをかけた状態

※リジットブレーキの効果
一般にキャリパーはアームに固定されている。ブレーキをかけるとリアタイヤは止ろうとするので、自然とスイングアームピボットが下がり、ブレーキの際大きなピッチングモーションを防げる。
今のリアタイヤは予想以上にグリップするので、その仕組みを有効に活かしたい。

フローティングブレーキの広告で「安定したブレーキング」とか、「リアのホッピングを防ぐ」などのコメントを見るが、これもあまりグリップしない古いタイヤへの考え方で、今はドレスアップアイテムと言っても良い。
後ろブレーキをかけても効かない時代の対応策と言える。


昔は有効とされたフローティングブレーキの仕組み
ブレーキをかけるとキャリパーはフローティングロッドを引き、スイングアームを地面に押し付けることでブレーキが良く効くようになるといわれたが、制動力のほとんどはアームを動かす力に消費され、ペダルを踏んでも効いているとは思えない。市販のキットはロッド両端のピローボールの破損が目立つ。


「後ろブレーキは使わない」とか、小径ディスクを使うのが一昔前のロードレーサーのステイタスであったが、タイヤがグリップせず効かないならそれは仕方がない。
今は違う。「リヤブレーキを使わない」ではなく、「使えない」という時代になった。
なぜなら、タイヤグリップの向上により、後ろも十分効く。
最速のロードレーサーでも、フローティングマウントは見ない。
リアの効きに重点を置いたセットも良く見る。モトGPチャンピオン ニッキー=ヘイデンがベンチレーティッドリアディスクを取り付けていたのは、熱対策が必要なほど使っているからだ。
ましてや、一般ストリートで、せっかくのリアを使わないのはおかしい。
タイヤの使い方も変わっている。タイヤがどんな状態でグリップするか市販タイヤでも1990年頃にタイヤの定義も変わっている。
だが、正しい解釈をしている人が、果たしてどれほどいるのだろうか・・・

続く・・・


注)・本コーナーに記載されていることは、決して第三者への忠告や誹謗中傷には該当しないことを明記します。
   ・ドキュメント形式の文面では、当事者の了解を得ています。
   ・本文は、基本整備が十分に出来ている車体を対象としたコメントです。

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