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vol6.続・タイヤは進歩した

column_vol.06 続・タイヤは進歩した


私はタイヤの選択について、多くのことを学んだ。
スポーツプロダクション、GPクラスへの参戦中にバイアスからラジアル、ラジアルもタイヤコンパウンドからタイヤ全体へとタイヤの基本特性が変わるとても良い時期だったこと、またネイキッドやスーパースポーツ両方に乗ることで、それぞれに適したタイヤを理論だけでなく、走ることでも学べたと思う。
ネイキッドに適したタイヤを知るための年数と経験、失敗(転倒)に感謝している。

■ネイキッドはどのようなタイヤを求めるか
■メーカー最高峰のタイヤが必ず良い走りをもたらすとは限らない


バイアスタイヤの頃、タイヤのキャッチフレーズは"変形しにくく剛性が高いタイヤ”
グリップ力の高いコンパウンドがタイヤの優劣を決めると高らかにうたっていた。
ゴムコンパウンドがグリップの要だった。


市販タイヤで「ラジアル」が普通になったのは90年代中半。
新型、新型の目白押しで、より速く走りたいから新しいのに目が行くのだが、ネイキッドでは曲がらないタイヤもあった。理由は「つぶれない」のだ。
90年代はリッタークラスにはCBR900RRを皮切りにスーパースポーツカテゴリーが確立し始めていた。タイヤはどんどんそのスーパースポーツよりの作りになっていく。
バイクユーザー全体で90年代後半はネイキッド離れがそれに拍車をかけたと言っても良いだろう。
タイヤの剛性がどんどん上がっていき、ネイキッドにとって走る印象は「硬い」のだ。ごつごつするし、コーナー進入の時に形がそのままで変形している印象が無い。倒しこむとグリップかんが希薄で今にも滑り出しそうになる。ぬるぬるした感覚に近い。
空気圧やフォークのバネレート、イニシャルの調整もその決定的な対策にはならなかった。
分かりやすくするため、キャスターの角度を大きく変えて表現した。
キャスターが寝ていると、減速Gはタイヤを押しつける方向以外に大きく分岐しているのがわかる。
このキャスターが寝たフォークで、ブレーキング時にタイヤをつぶすのは困難と思える。サーキットにターゲットを絞ったスーパースポーツ向けのタイヤに進化していく。同時にネイキッド用タイヤとの確執が生まれたと言ってもよいだろう。


バイクを曲がらせるにはネイキッド、スーパースポーツ問わずタイヤのつぶれが重要。
ではなぜネイキッドとスーパースポーツに違いがあるかといえば、車体の前後の重量配分、キャスター角の違いが大きい。
前輪重量配分が多く、ブレーキングからコーナー進入で前タイヤをつぶすに至るスーパースポーツに対し、ネイキッドはそのつぶれ感が少ない。
結局曲がるきっかけを作りにくく、コーナーではそのおつりが出て加速になかなか移れなかったりする。
タイヤ選択には慎重さが要求される。
タイヤの旋回力は、変形(つぶれ)も重要なファクター。
ラジアルになってその傾向ははっきりしてきたと思う。
タイヤは変形した分、元に戻そうとする反力がよりマシンを曲げる力になる。
サーキット走行会などに参加すると、コンパウンドはほんの少ししか減っていないのに旋回力が落ちる。それは大きな加重をかける走りをすると、ケーシングがへたり(劣化して)反力が落ちるためである。
これはラジアルに限定されない、タイヤの寿命は溝の深さで判断されがちだが、タイヤ全体のへたりも関係している。あまり体験できないが、新品と中古のタイヤを指で押すとその違いが分かる。新品の方が押し戻す力が強い。


メーカー最高峰のハイスペックタイヤはどうか?
どんなコーナーもガンガン攻めることの出来るタイヤなのかと言うと、
タイヤの断面形状が、公道で普通に滑らかに走ることからどんどん遠ざかっている。
レーシングタイヤ、スポーツタイヤと言うとグリップし、良く曲がるタイヤだと安心しがちだが、一般公道ではずばり曲がりにくい。
これは、曲がるということは、タイヤ自体の反力も大いに関係しているからだ。
良く曲がるからレーシング、スポーツタイヤなのではないか?
特定の環境なら答えはYES.
簡単に言うとタイヤ断面が三角形に尖っていて、バイクが起きているか、フルバンクしているか、その2つにターゲットを絞ったタイヤになっている。
サーキットのような直線かコーナーにわけられている環境に限定して考えるべきで、峠道に行って常にフルバンクのハイエンドな方々には強い味方だと思うが、通常は浅いバンキングのほうが多くマイナス要素が大きくなる。

左は、俗にいうツーリングタイヤ。よく、シングルクラウンRと呼ばれる滑らかなタイヤ断面を持つ。
浅いバンキングでも常にタイヤがある。バンクさせたときの形状の変化率は一定と言える。
タイヤは変形した反力でも旋回力が上がることを説明した。
フルバンクでなくとも、常時旋回力を示す峠ではこのタイヤが有利な時が多い。サイズは同じでもタイヤケーシングはナイロンで柔軟性を特徴にしたタイヤ銘柄も多い。

右はレーシング指向のタイヤで断面は尖っている。
バンクさせるとタイヤ形状の変化率が高く、すぐにバイクを寝かそうとする。
このときライダーは寝かすのが軽いと感じる。言い方を変えると、少しの入力でフラフラする。フロントは原付並みの軽さに思える。
だが、ツーリングタイヤと比べて、深くバンクさせたときの接地面の広さを考えると、そのパフォーマンスが想像できる。
ハイスピードコーナリングを目的にしているものが多く、タイヤのケーシングはスチールベルトが多いのも特徴だ。
※図は特徴を表したイメージである。



スポーツ専用タイヤは、向きを変えるのに深いバンクが必要とされる事を忘れないで欲しい。
カタログの説明文は「レーシングテクノロジー・・・」「ハイスペック・・・」と心をひかれるが、
最上級ではなく1ランク下のタイヤ(言葉に語弊があるが。)が、ネイキッドには曲がりやすい特性を持たせることが多い。
「XXXタイヤ入れたけど、思うように走れなくなった」「ツーリングタイヤにおいていかれた」
など、原因はタイヤ選択にあることが少なくない。


注)・本コーナーに記載されていることは、決して第三者への忠告や誹謗中傷には該当しないことを明記します。
   ・ドキュメント形式の文面では、当事者の了解を得ています。
   ・本文は、基本整備が十分に出来ている車体を対象としたコメントです。

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